あなたは「インスタグラマー」という言葉を聞いたことがありますか?これは、現在若い世代の間で最も使われている写真投稿サービス「インスタグラム」内の、人気ユーザーを指す言葉です。連載「ネット時代のインフルエンサー」第3回のゲストは、そんなインスタグラマー達の中でも、いま最も勢いがあると言われているささっきぃさんをお呼びしました。(第2回:「YouTuber・SASAKIN」はこちら)
文・写真=佐々木遼介
はじめに:ささっきぃとは?
いま国内で最も勢いのあるインスタグラマー、その名も「ささっきぃ」。とりわけ10代女性からの支持は絶大であり、動画内で口ずさんだ曲は翌日のチャートで上位を獲得、紹介した商品はその日のうちに品切れになるほど。
ささっきぃ氏がインスタグラムに姿を現したのはつい半年前、1月のことであった。その後わずか3ヶ月でフォロワー数は20万人まで到達。その間に、他の300人以上のインスタグラマーが彼の投稿に圧倒されインスタグラムを引退したとも言われている。
月間利用者数6億人とも言われる巨大サービスで、一体どのような手法で現在の地位を手に得たのだろうか。また今記事では、先日一部のニュースサイトで取り上げられた「ささっきぃステマ疑惑事件」についても、終盤で扱っている。
「『インスタ映え』が超大事。チャーハンはインスタに向いてない。パステルカラーが超大事。」—ささっきぃ
————ささっきぃさん、本日はよろしくお願いいたします。実は事前にアカウントを拝見させていただいているのですが、実際にお会いすると写真とは違う雰囲気でびっくりしました。
ささっきぃ:
そうですかね。
————ささっきぃさんは、登録開始からわずか3ヶ月間で20万人ものフォロワーを集めています。よければ初めて投稿された日から今までの経緯について教えていただけませんか。
ささっきぃ:
初めは周りの友達と同じように、おいしかった食べ物の写真を載せていました。
一番最初に投稿したのはチャーハンの写真です。
実は僕はチャーハンが大好きで、いつも写真に撮っていたんですね。
そこで友達にも紹介しようと思って載せてみたのですが、全然『いいね!』が付かなかったんです。
ささっきぃ:
「どうしてチャーハンは、こんなにおいしいのに『いいね!』が来ないんだろう」と不思議に思いました。
どんな写真ならいいのか知りたくなり、「インスタグラマー」と呼ばれる人達の写真を見てみました。
すると、あることに気が付きました。
それは、投稿する写真が、花や可愛いスイーツのような、色彩豊かでキレイなものばかりだいうことです。
このようにインスタ上で「映える」被写体は、俗に「インスタ映え(ばえ)」と言われています。
ではその一方で、チャーハンはどうでしょうか。
残念ながらチャーハンにはそういうパステルカラーの要素がありません。
強いて言えばエビはピンク色ですが、僕は甲殻類アレルギーなので、はい。
————それからはインスタ映えを意識した投稿を続けたということですね。
ささっきぃ:
はい、常にインスタ映えを意識しています。
というかインスタ映えしないことはしなくなりました。時間がもったいないので。
インスタを始めてからチャーハンは食べていません。「チャー」要素も「ハン」要素もインスタ映えしないので。
あ、「ハン」はギリギリ映えさせることができるかな。ただ「チャー」の要素は無理ですね。
————食べてすらいないのですか?
ささっきぃ:
そうです。チャーハン自体はとても好きなんですけどね。
でも僕、インスタグラマーなんで。
インスタに投稿するかしないかとかは関係ないんです。
インスタじゃないところでも常にインスタ映えを意識するのが一流のインスタグラマーです。
次にチャーハンを食べる日は…、それは、パステルカラーのチャーハンが登場したときですね(笑)
————インスタ映えをするのは例えばどんな写真ですか?
ささっきぃ:
うーん、難しい質問ですね。
定番を挙げると…、スタバ、ディズニー、カプチーノ、手作りの朝食プレート、コーヒーにドーナツが乗っかったピンクのやつ、おもちゃみたいなソフトクリームのピンクのやつ、くらいかな。
あと来月(8月)はひまわり畑がオススメですね。
最近の夏の女子大生はすぐひまわり畑に行きますから。
家にいるか、ひまわり畑にいるか、みたいな。
多分春の終わり頃からずっとひまわり畑のことを考えているんだと思います。
まあ僕は、冬の始まり辺りから考えているんですけどね、これでも一応インスタグラマーなんで(笑)
————撮影のテクニックはありますか?
ささっきぃ:
一番簡単なのは、とにかく自然光で撮ることですね。
日光で撮るとナチュラルな印象になり、どんなものでも比較的インスタ映えするようになります。
逆に言うと、蛍光灯やフラッシュライトでは駄目ということです。
僕は少しでも長く自然光を利用するために、毎朝4時に起きています。
————4時ですか?
ささっきぃ:
はい、インスタグラマーの間ではこれくらい普通ですよ。
夜も19時には布団に入ります。
暗くなったら自然光を使えないので、起きている意味も無い(笑)
「『ささっきぃのダンス』は現代人のリアルを語っている」―ささっきぃ
————インスタ映えする写真のテクニックは分かりました。ただ、先ほど挙げていただいたような写真は、既に沢山の方がアップロードしているため、飛び抜けて人気になることも無いと思います。ささっきぃさんのブレークの決定打は何でしたか?
ささっきぃ:
えっと、僕の場合は「ダンス動画」でしたね。
————ダンス…、ですか?
ささっきぃ:
はい、そうです。
え、見ていないんですか、「ささっきぃのダンス」を?
————はい、すみません、ちょっと見落としていましたね。どのようなダンスなのでしょうか。「恋ダンス」のような、既存の音楽や振付けに合わせて踊った、というイメージでよろしいでしょうか?
ささっきぃ:
いや、違いますね。
曲もダンスも全て自作のものです。
————完全にオリジナルなのですね。
ささっきぃ:
はい。
————その投稿、見せていただけますか?
ささっきぃ:
はい、こちらです。
————…。
ささっきぃ:
どうしましたか?
————あ、でも、すごい再生回数ですね。
ささっきぃ:
はい、ありがとうございます。
この動画を上げてから急にフォロワーも増えましたね。
————ちなみにこのダンスのどのような部分がヒットの要因になったと思っていますか?
ささっきぃ:
えーっと、オリジナリティがあるということも1つの要因だと思うんですけど、もっと大きいのは現代人の「リアル」を歌ったところですかね。
僕達の世代って、受け取る情報がリアルかフェイク(偽物)かにとても敏感なんですよね。
雑誌とか企業とかが「○○が流行っています!」って言っても、「どうせ宣伝なんでしょ」って思っちゃう(笑)
ちょっとでも金の匂いがすると、「作られたモノ感」が出てしまうんですよ。
でもささっきぃのダンスの内容は全てリアルなんですよね。
例えば歌詞にある「大学4年生の女子は卒業旅行に4回くらい行く」というフレーズも、実はリアルなんです。
実際に大学4年生の女子は本当に何回も卒業旅行に行く人が多いんですよ。
パリに行ったと思ったら次はグアムに行って、しまいにはニューヨーク、みたいな。
就職したらもう当分海外には行けないと思っているのか、年度末の予算消化なのか、税金対策なのかは分かりませんが、とにかく春休み中に何ヶ国も行くんです。
こういったリアルな情報を届けたことが「共感」に繋がり、ヒットしたのだと思います。
————つまりこのような唯一無二でもありながら共感を呼ぶリアルなコンテンツを投稿するのが、人気インスタグラマーへの近道なのですね。大変参考になりました。
「インスタグラマーは1回の投稿のために100枚以上撮影する」―ささっきぃ
————インスタグラムを続けていて、大変なことはありますか?
ささっきぃ:
はい、もちろんありますよ。
2点あるのですが、1つ目は「ダンス動画ばかりを求められること」ですね。
————「求められる」というのは、つまりどういうことでしょうか。
ささっきぃ:
はい、ダンス動画があまりに完成度が高かったせいか、関係ない投稿をするとこういうことをコメントされるようになってしまって。
————とても荒れていますね。
ささっきぃ:
そうなんです。
こういうコメントが沢山付いてしまうので、毎日新しいバージョンを作って撮影しています。
————2点大変なことがあるそうですが、もう1点はどんなことでしょうか。
ささっきぃ:
はい、もう1つは、これは僕以外のインスタグラマーの方々にも共通することだと思うのですが、単純に写真の撮影が大変だということですね。
一般的なインスタグラマーは、1枚の写真を投稿するために、100回以上撮影すると言われています。
————100回以上ですか。すごいですね。つまり100枚以上撮影して、その中から最も良い1枚を厳選して投稿するということですね。
ささっきぃ:
そうです。
角度や表情や光の当て方をちょっとずつ変えながら、最も映える写真を選びます。
そして1枚を選んだら、今度は写真編集アプリで加工や修正を施して、より完璧な1枚を目指します。
そうしたら今度は本文やハッシュタグの内容を、見た人を惹きつけられるよう何度も吟味して、やっと投稿することができるんです。
インスタグラマーにとっては当たり前の作業なのですが、やっぱりちょっと大変ですね。
————なるほど、理解しました。ただ少し気になったことがあるのですが、よろしいでしょうか。
ささっきぃ:
はい、なんでしょう。
————先ほど「『リアル』な情報が大事」とおっしゃいましたよね。
ささっきぃ:
はい。
————100回以上撮影し直したり、アプリで修正をした写真は「リアルな情報」なのでしょうか。どちらかといえば先ほどささっきぃさんが「フェイク」とおっしゃった、「作られたモノ」に近いと思うのですが…。
ささっきぃ:
はい?いや、違いますけど。
————違うのですか?
ささっきぃ:
え、はい、違いますね、全然違います。
ささっきぃはリアルなんで。
うちの両親も「ささっきぃはリアル」って言っていたので。はい。間違いなくリアルですね。
「え、ち、ち、ち、ちがちが違いますけど…」―ささっきぃ
————なるほど、分かりました。ではその「リアルかフェイクか」の件について、最後にもう1点だけ質問があります。
ささっきぃ:
はい、なんでしょう。
————先日、とあるニュースサイトにて、ささっきぃさんがインスタグラム上で「ステマ」、つまり企業から金品を貰い、その企業の商品の投稿を頼まれているにもかかわらず、あたかも自分の意思で購入したかのように投稿しているのではないか、との記事が掲載されていましたが、こちらは真実でしょうか。
ささっきぃ:
いや、違いますね。
ステマはやっていないです。
————そちらの記事では、この「SASAKIST」というオーガニック・ボディソープについての投稿が、そうなのではないかとされています。
突然ではあるが、ここで今回の取材は終了である。いや、正確に言えば終了ではなく「中断」だ。
というのも、ささっきぃ氏が記者の最後の質問に答えかけた瞬間、彼の胸元にスナイパーライフルのレーザーポインターのような赤い光が当たったからである。
私がささっきぃ氏にそのことを伝えると、彼は慌てて窓を開け、どこか遠くを見ながら「違うんです!!今言いかけたのは嘘です!全部自分の意思で買って紹介したんです!だから命だけは…!!」と叫んだ。その後何秒かして赤い光は消えたが、万全を期して取材は終了とした。
現在ささっきぃ氏はその際の精神的な疲弊により、都内の病院にて療養中である。
編集部の中には、「彼は脅されてステマをさせられているのではないか」と予想する者もいたが、その真偽は未だ謎である。
本日の朝、ささっきぃ氏のもとへ見舞いへ行ったところ、彼はベッドの上でスマートフォンを握りしめていた。調子はどうかと話しかけると、こう答えた。
「『入院しました』系の投稿って、沢山コメントと『いいね』が付くんですよね。」(終)
インスタグラマーは命を懸けてやる時代なのですね。ささっきいすごい。
Instagramで調べたらちゃんとささっきいさんのアカウントがあった…!プロフィール欄の一言まで面白かったです笑
面白くて眠れなくなりました。
この記事めっちゃいい
久々にブログにお邪魔しましたが、相変わらず面白すぎますね。
眠れなくなりそうなので、明日また改めて読みます。
コメント残せるんですか!?