痩せてしまったらどうしよう

🎄 2015-10-17

 ある事実に気がついてしまった。

「このまま目標体重まで痩せたら、そのあとは何を目標にして生きてゆけばいいのだろう」

 僕は今ダイエットをしている。毎日ジムへ通っては、エアロバイクを漕いでいる。このまま漕ぎ続ければ、無事に目標体重まで脂肪を減らすことができるはずだ。ここまでは何の問題も無い。問題なのは、その先である。

 今の僕の人生における最大の喜びは、朝に乗る体重計に前日よりも低い数値が表示された、つまり痩せたことを実感した瞬間である。ダイエットを生きがいにしていたようなものだ。しかしこの喜びは永劫に訪れてくれるものではない。いつか終わりがやってくる。僕はただ痩せることだけを意識していて、痩せ終えたあとのビジョンについては何も考えていなかった。そう思うと、急に痩せることが怖くなってきた。まさかダイエットとの別れを悲しむことになるなんて、全く予想もしていなかったからだ。このままだと生きる糧を失い、廃人になってしまいかねない。

 では、それを避けるためにはどうすればいいだろうか。僕はエアロバイクに座りながら、何かいい「次の生きる糧」がないかと辺りを見渡した。すると目に留まったのは、バーベルを持ち上げる筋肉質なお兄さんだった。

「そうだ、強くなろう」

 そう、筋トレである。筋肉を付ければ太りにくい体になるし、何より見た目もいい。今まで強さとは無縁の人生を送ってきた僕にとってはいい目標である。しかしこれには大きな問題もある。強さには終わりがないということだ。ダイエットには限界があるが、強さに限界はない。人間は鍛えれば鍛えるほど、無限に強くなってしまうからだ。痩せ終えたあとのビジョンが明確になったのは喜ばしいが、今度は逆にゴールのない目標ができてしまった。僕は知らぬ間に、これからの人生を終わりなき超人への道に捧げることになってしまっていたのである。

 そんなことを考えながら、今日も僕はエアロバイクを漕いだ。

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