「義理いいね」

🎄 2015-10-27

 良好な人間関係を築くためには義理と人情が重要だという。それを実感したのは、今年のバレンタインデーだった。母親からしかチョコレートが貰えなかった僕は、日頃から義理を大事にしていれば、もしかしたら誰かから「義理チョコ」が貰えたかもしれないと切に思った。

 そんな孤独な生活を送っている僕は、もちろん授業も1人で受けている。せめて何か変わったことはないかと周りを見渡してみると、斜め前に座っていた女性が、何やら独特な手さばきでスマホを操作しているのが見えた。いけないことだとは分かりつつも、彼女はいったい何をしているのだろうとその画面に目をやると、どうやらインスタグラムを開き「いいね」を押しているようだった。それ自体は何もおかしくはない。奇妙だったのは、彼女は人の投稿をほとんど、いや、全く見ておらず、反射的に「いいね」を押していたことだった。さらにその動きも、右の親指でタイムラインを下に流し、左の親指で「いいね」を押すという、一切の無駄がない、もはや「工業的」というにふさわしいほどの洗練された手さばきだった。

 きっとこの「いいね」は、「いいね」の意味での「いいね」というよりも、「見ました」のニュアンスに近いのだろう。彼女の「いいね」はその写真の品質への「いいね」だけではなく、友人関係に対する「いいね」、つまり「義理いいね」でもあるのだと思う。

 「義理いいね」はこの女性だけに見られるものではなく、日常的にSNSを使っている人であれば、誰しもが少なからず持っている感情だ。自分はというと、実は僕は滅多に「いいね」をしないほうである。きっとこのような態度がバレンタインでの悲しみを生んでいるのかもしれない。

 しかし来年の2月は、おそらく沢山の義理チョコを貰うことになるだろう。なぜなら僕は、とある「いい」作戦を思いついたからである。

Share 🎁