エンンマッ

🎄 2015-10-23

 発音記号どおりに、そして正しいアクセントの位置で発音すれば、英会話は意外となんとかなる。これは僕がアメリカへ行ったときに実感したことだ。しかし、これがなかなか難しい。日本語と英語は、そもそも言語体系的にも非常に遠く隔たったところにある言語だからだ。

 先日の外出中、どうしても喉が渇いたので、たまたま近くにあったマクドナルドへ立ち寄った。僕は現在ダイエット中でカロリーの高いものは頼めないので、「コカコーラゼロを、Mで」と注文した。ここまではいい。しかし相手の店員が外国人の男性で、僕の「M」の発音が悪かったようで「M?L?」と聞き返されてしまった。確かにカタカナ発音の「エム」と「エル」は紛らわしいし、それに元の英語の発音とは大分異なっている。ただ僕の中には、なんとなく日本国内で「ネイティブ風」の発音をするのは少し恥ずかしいという中学生のような気持ちがまだ残っており、若干躊躇してしまった。しかしこのような姿勢のままではあっという間にグローバル化の波に飲まれてしまう。そこで僕は勇気を出し、国際社会への第一歩を踏み出した。

 「エンンマッ」

 我ながらなかなか良い出来だった。僕はまるでネイティブのごとく美しく、そしてはっきりと「エンンマッ」と発音した。しかしその後、2つの事件が起こった。1つは、僕の「エンンマッ」の瞬間、その男性店員の隣にいた女性店員が笑いを堪え出したことだ。まあ、彼女の気持ちもよく分かる。むしろ悪いのは、そのような風潮を作り出した日本の英語教育である。だからそれは百歩譲っていいとしよう。問題はもう1つの方だ。

 「はい、エムですね。」

 どうやら聞き返されたのは発音のせいではなく、単に僕の声が小さかったせいだったようだ。それほど彼の返事は、流暢な日本語の「エム」だった。とりあえず注文ができたことには安心したのだが、日本人の僕の「エンンマッ」と、外国人の彼の「エム」のあまりのコントラストのせいで急に恥ずかしさがこみあげた。

 無事商品を受け取った僕は、逃げるように店を後にし、いつもより早歩きで家に帰った。皮肉にも早歩きとコカコーラゼロは相性が良く、いいダイエットにもなった。

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